そろそろ梅雨に入ろうかという時期になると、蛍が飛び始めますよね。

 

 

蛍は初夏の夕暮れの風物詩として、数々の文芸作品でも取り上げられています。

 

あの幽玄で絶え入らんばかりの淡い光りは、日本人の感性にぴったりなのでしょう。

 

風情という言葉は蛍のためにあるのかも知れませんね。

 

しかし、今回は文芸でも感性でもなく、蛍の科学的な面に迫り、蛍が光る原理や仕組み、オスとメスの違いなど、更には一番きれいな瞬間などを考証します。


蛍が光る原理や仕組みは?

それでは蛍が光る原理や仕組みを見てみましょう。

蛍はなんのために光る?

誰でもまず最初に思うことは、「蛍は一体なんのために光るのだろう?」ということでしょううね。

成虫になるまでは、

主に『警戒行動』のための発光

と言われています。

成虫になってからは、

  • プロポーズするための光
  • 仲間とコミュニケーションをとるための光
  • 相手を威嚇するための光
  • 驚いた時の光

などが、発光の主な目的です。

メスに対しての求愛は、蛍が光る最大の目的です。

つまりは、

「ほら君、おれはこんなに輝いているんだよ! どうだ、美しいだろう、立派だろう?!」

ということですね。

なんだ! 蛍も人間もほとんど同じじゃないですか!

二番目は、仲間の蛍に

「お~い! おれはここにいるぜい!」

と、自分の居場所を教えあっているのです。

又、外敵に対して威嚇するために光ったり、逆に敵などに出会って驚いた時にも光るそうですよ。

なので、ホタルが目の前にいるのに光らない時は、そ~っと息を吹きかけてやると光り始めたりします。

もっとも全ての種類の蛍が光るわけではなく、むしろ光らない蛍の方が多いようですね。

蛍は全世界では約2000種以上もいるのですが、日本国内では約40種ほどが確認されています。

その日本の蛍で光るのは、およそ10種ほどしかいません。

日本の光る蛍で有名なのは、

ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメホタル

の3種です。

この中で最も大きく強く輝くのがゲンジボタルで、蛍の日本代表『ホタルジャパン』ですね。

但し、ゲンジボタルは環境の汚染には弱く、澄み切った清流でしか生息、繁殖出来ません。

つまり、ゲンジボタルがいるということは、その地域に環境汚染がないという、あかしのようなものですね。

これに対して、ヘイケボタルは一回り小さく、光も弱いのですが、その代わり多少環境汚染のある川にでも生息できます。

ヒメボタルは最も小型で、ストロボのような短い間隔で発光するのが特徴です。

蛍が光る原理や仕組み

蛍の発光のメカニズムは、化学反応による発光です。

ホタルのお尻にある黄色い『発光器』が、あのたおやかな光を放つ部分なのです。

この発光器の中には、3種類の酵素と成分が入っています。

  • ルシフェリン
  • ルシフェラーゼ
  • ATP

このルシフェル(Lucifer)とは明けの明星(金星)を指す語で、光をもたらす者という意味をもつ悪魔・堕天使の名でもあります。

『ルシフェリン』は発光する本体。

『ルシフェラーゼ』はそのルシフェリンの発光を助ける物質。

『ATP』はすべての真核生物が使う、代謝のための重要物質です。

この3つが組み合わされることで、『ルシフェリンーAMP』という物質が生成されます。

そして、この『ルシフェリンーAMP』」と、空気中の酸素が結びつくと、

『オキシルシフェリン」という発光物質が生成され、それによってあの蛍の端麗な光が生まれる

という仕組みです。

尚、この発光のメカニズムは、蛍だけではなく、海に住むホタルイカやウミホタルなどでも、同じメカニズムなのです。

又、この発光では使ったエネルギーは、

ほぼ100%近く光に変換され、ロスが殆どありません。

白熱電球や蛍光灯でも、触ればかなり熱いですよね。

入力(電気)に対して光に変換する率(効率)は、

白熱電球の場合は10%程度、蛍光灯の場合は20%程度、LEDでも30~50%程度

です。

入力の大半は、熱などになってロスしているのです。

ところが蛍の光は触っても全くといって良いほど熱くありません。

冷たいままなのです。

そのため蛍の光は、『冷光』と呼ばれます。

蛍の光が点滅する理由と光の色の違いは?

蛍の光り方は、つきっぱなしではなく、ついたり消えたり明滅していますね。

なぜそのように明滅するのでしょうか。

蛍の発光する部分(発光器)は、

  • 発光細胞
  • 反射細胞
  • 神経
  • 気管

の4つの部分で作られています。

発光細胞の中には、発光に必要な酸素を送るための気管と、その供給を調節する神経が入っています。

その神経の働きで光が明滅するわけです。

蛍の種類によって、光の色も少しずつ違っていますね。

この色の違いは、酵素であるルシフェリンとルシフェラーゼの種類によるものなのです。

  • 普通の緑色
  • 黄緑色
  • 黄色
  • オレンジ色

など、ルシフェリンとルシフェラーゼの種類により、様々な色の光があります。

 

蛍の光とオスとメスの違いは?

蛍の光にオスとメスの違いはあるのでしょうか?

蛍は光る種類のものなら、オス・メスどちらも光ります。

しかし、身体の大きさは、おおむねメスの方がオスより大きいのです。

ところが、オスの発光器は2つ、メスの発光器は1つという違いがありますので、大半の種類ではオスの方が光が強いのです。

そして、オスの蛍が光るのは、メスへの求愛のアッピールなんです。

なので、オスは明るく光りながらメスを求めて飛び回ります。

メスの方は川辺の草や木の葉にとまっていて、やや弱い光を放ってオスを待ちます。

つまり、飛んでいる蛍は殆どがオスということになりますね。

蛍の女性?は、人間とは違っておしとやかなんですね。

蛍の光りかたで一番きれいな瞬間は?

蛍のり光りかたで一番きれいな瞬間は?となりますと、

見る個人の心象により

決定されるように思いますね。

つまり、蛍の光を見た時に、その人がどのような精神状態にあるのか、見た時のシチュエーションはどんな状態なのか、それによって決まると思うのです。

幸せに満ちあふれて高揚した精神状態の時、もの思いにふけり気持ちが揺れ動いている時、失意のどん底にあって絶望の淵にいる時など、

全く同じ蛍の光を見ても、その人が感じ取る蛍の光はまるで違ったものになる

でしょう。

私の見た蛍の光の中で、もっとも印象に残り、もっともきれいな瞬間は、このようなものです。

とある辺鄙な山村の、初夏の夕暮れです。

あたりは夕闇が迫って人影もなく、聞こえてくるのは、ただ傍らを流れる清流のせせらぎのみ・・・

その静寂の中を歩いていると、やがて夕陽の残照も消え、あたりは真の闇に閉ざされました。

そして・・・

ふと気がつくと、蛍の大群が乱舞しているのです!

その明滅する光は、山肌と清流の闇にもくっきり浮かび上がり、この世のものならぬ夢幻的な光景でした。

その時の私の心は、とある少女への儚い想いで充溢していて、消えんばかりのうつろな蛍の光は、その象徴と見えたのです。

空疎であるがゆえの美しさ、これが私の蛍の光りかたで一番きれいな瞬間でした。
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結び

蛍の光や虫のすだく声に、ものの哀れを感じるのは、日本人独特の感性のようですね。

色々な文学作品にも、蛍の光や虫のすだく声が取り入れられています。

欧米人は、蛍の光がきれいだと思っても、ただそれだけですし、虫の声にいたっては単なる雑音としか聞こえないそうですよ。

今回は、その蛍が光る理由や原理などを見てきました。

蛍の光の最大の特徴は、超高効率の光に変換する効率ですが、ルシフェリンによる冷光には、人間が到底及びもつかない自然の神秘さを感じさせられます。

オスの蛍が光る目的も、メスへの求愛などオスメスでも違いがありますし、見れば見るほど自然の不思議さは募るばかりですね。