イワナは渓流の王、鮎は渓流の妖精などと言われています。

 

となれば、ヤマメは渓流の女王というところでしょうか。

 

関西ではアマゴという名称が一般的で、しなやかな身体の中心線上に、赤い斑点が並ぶという、おそらく魚の中で最も美しい渓流魚です。

 

関東のヤマメは、赤い斑点がなく、背びれなども少し形が違いますが、美しさは変わりません。

 

しかも、このヤマメは食べても非常においしく、その味は川魚のナンバーワンでしょうね。

かし、川魚の常で、このヤマメには寄生虫がいる場合が多いのです。

 

今回は、ヤマメの寄生虫について、また刺身の食べ方や捌く注意点などを見てみましょう。

 

尚、この記事ではヤマメと書いた場合、特に注釈がない場合は、アマゴも含めております。

ヤマメの刺身には寄生虫がいる?

ヤマメとは、山女魚、山女とも書き、その名の通り、清らかな渓流の女王的存在なのです。

 

やや細身のしなやかな身体には、中心線上に関東のヤマメでは線上にうす赤い線が、関西のアマゴでは赤い斑点がならび、一目見ただけでその美しさには陶然とさせられてしまいます。

 

味も絶品で、川魚の中では文句なしにナンバーワンと言えます。

 

ヤマメはサケ目サケ科に属し、サクラマスの中で降海せずに、一生を河川で過ごす陸封型の魚です。

 

近い種であるイワナより一回り小型であり、20センチ前後の大きさが主で、30センチを越える、いわゆる尺ヤマメはまれです。

 

ところが、この美しいヤマメにも寄生虫がいる場合が多いのです。

 

天然の場合のヤマメのエサは、主として昆虫(水棲や空中から落下したもの)ですが、サワガニなども食べます。

 

それらのエサには寄生虫がいることが多く、それがヤマメにも感染するわけです。

 

ところで、ヤマメには三種類あります。

これは分類学上の分類ではなく、育った環境による分類です。

  1. 天然もの
  2. 放流もの
  3. 養殖もの

天然ものは、その名の通り、自然環境の中で繁殖したものですが、かなりの確率で寄生虫に感染しています。

『放流もの』というのは、養殖場で養殖したヤマメを、渓流に放流したものです。

 

ただし、『放流もの』と書かれた場合は、下記の養殖もののような完全に管理された養殖場ではなく、単に渓流の一部を区切って養殖したものの場合が多いのです。

 

そのため、寄生虫がいる中間宿主のエサを食べる可能性もあります。

 

又、養殖中には寄生虫に感染していなくても、放流後に川虫などを食べて感染する場合もあります。

 

そのため、寄生虫に関しては、天然ものとほぼ同じ注意が必要です。

 

養殖ものは、よく管理された養殖場で、寄生虫などに感染しないよう、十分配慮して育てられたものです。

 

但し、ヤマメが育つような清冽な環境は、そうざらにはないため、大量に養殖するのは困難です。

 

そのため、市場にはあまり出回らず、売られていたとしてもかなり高価になります。

ヤマメにいる寄生虫

『ヤマメにいる寄生虫』と書きましたが、全てのヤマメにこれらの寄生虫がいるという意味ではなく、『いる場合可能性のある寄生虫』ということです。

横川吸虫

横川吸虫はアニサキスと並んで、魚、特に川魚に最も多い寄生虫です。

横川吸虫は『ジストマ』の一種です。

ジストマとは、キュウチュウ類中の一亜目で、主として肺や肝臓に寄生する恐ろしい寄生虫なのです。

横川吸虫は、腹痛や下痢が主体という、比較的軽い症状ですが、それでも危険な寄生虫であるのは間違いありません。

肺吸虫

肺吸虫は主にサワガニを中間宿主とするジストマの一種です。

そのサワガニをヤマメが食べ、そのヤマメを人間が食べることで、人間も肺吸虫に寄生されます。

その寄生される場所が肺や、まれには脳という人体の最重要器官なので、余計に怖いですね。

しかも、食べてから数年、あるいは十数年まで、発症しない場合もあるとのことで、自覚症状が現れてからでは手遅れという、恐ろしいジストマです。

肝吸虫

これは肝臓に寄生するジストマなのですが、ヤマメにはあまり多くはないようです。

中間宿主はカワニナやタニシで、魯山人が命を落とした原因とされています。

顎口虫

顎口虫は、川魚の寄生虫の中でも最も危険なものの一つです。

ヤマメにはそれほど多くの例はないようですが、皆無ではありません。

幼虫が人間の胃の中に入ると、胃壁を食い破って体内を移動しますが、その移動の際に強いかゆみを感じます。

しかも皮膚の表層まで移動してくると、皮膚にはこぶのような膨らみが生じたりもします。

広節裂頭条虫

いわゆるサナダムシです。

これもヤマメにはあまりいませんが、見た目はやたらグロイですね。

症状はほとんど出ない場合も多く、重症に至る場合は少ないようです。

アニキサス

魚の寄生虫の定番、アニサキスですが、これもヤマメには比較的少ないようです。

症状は比較的軽く、死に至るケースは殆どありません。

 

ヤマメの刺身が食べたいときの捌き方の注意点は?

ヤマメに限らず、川魚の寄生虫に感染しない方法は、2つだけです。

十分に加熱する

完全に管理された養殖場でとれた魚を食べる

ですから、刺身などの生食でヤマメの寄生虫に感染しないためには、完全に管理された養殖場でとれたヤマメを食べるしかないのです。

さばき方や、洗浄では寄生虫を完全に除去するのは不可能です。

内臓に寄生するものは、さばくときに内臓を取り除けば除去できますが、筋肉の中まで入り込んだ寄生虫は、いくら洗っても除去できません。

 

ヤマメにいる寄生虫が人間に入るとどうなる?

横川吸虫

横川吸虫に寄生されると吐き気や下痢などがありますが、症状は軽度な場合が殆どで、重篤な場合は少ないようですね。

また、ほっておいても治る場合もあるそうです。

その理由は、横川吸虫の寿命は短いので、強い症状が出る前に死んでしまうからだそうです。

肺吸虫

肺吸虫(肺ジストマ)に寄生された場合の症状としては、創傷性肝炎、腹膜炎、胸水貯留、気胸、発熱、発咳、血痰などがありますが、ちょっと結核の症状にも似ていますね。

怖いのは、脳に侵入された場合で、その時は頭痛、嘔吐、てんかん様の発作、視力障害などを起こし、死亡することもあるそうです。

肝吸虫

肝吸虫が寄生しても、少数の場合はほとんど症状が出ない場合も多いようです。

しかし、多数が寄生すると、胆管壁とその周囲で慢性炎症があり、肝細胞の萎縮や壊死がおこり、肝硬変となります。

それにより食欲不振や全身の倦怠感、下痢、腹部膨満、肝腫大がおこり、腹水、浮腫、黄疸、貧血を起こすようになります。

尚、北大路魯山人の死因として、「生煮えのタニシを好んで食べたため、肝吸虫に感染し肝硬変を起こして死んだ」という説があります。

しかし、肝吸虫の中間宿主であるマメタニシは食用にするタニシ類とは違い、小さいので食用にされることはありません。

それに一般に食用とされるマルタニシやオオタニシには、肝吸虫は寄生しないのです。

ということで、魯山人の感染源は、コイやフナなどの淡水魚の刺身としか考えられませんね。

顎口虫

顎口虫は皮膚の下を移動し、引っ掻いたような皮膚の炎症を起こします。

大半は痒み程度ですが、まれに非常な痛みを伴う皮膚爬行症(ひふはこうしょう)や、皮膚顎口虫症などという症状が起こります。

体内を動き回るので、目に入った場合は失明、脳の中に入った時は脳障害などの例もあります。

但し、実際にこの顎口虫に寄生されたケースは、日本ではごく少数です。

広節裂頭条虫

広節裂頭条虫はサナダムシの一種です。

症状は下痢や腹痛が主ですが、全く症状が出ないことは多いのです。

又、広節裂頭条虫は人体内においてアレルギー反応を抑制する成分を分泌するので、アレルギー症状の特効薬としても研究されています。

但し、副作用などの問題で実用化には至っていません。

オペラ歌手のマリア・カラスは、日本人医師の勧めで、このサナダムシを飲んでダイエットしたという、有名なエピソードがありますが、これはどうもガセネタらしいですね。

マリア・カラスは整形に整形を重ねて、『王女メディア』などの映画にも出演していますが、若い頃はブスの代名詞的存在でした。

しかも相当な太めさんであり、友人達にはそのことでいじめられたりしていたのです。

私はカラスの少女時代や若い頃の写真を何度か見たことがありますが、「これは確かにいじめの対象になりそうだなぁ・・・」などと、カラスのファンには怒られそうな感想がありましたね。

ところが彼女はそのストレスを逆手にとって、得意の声に生き甲斐を見つけ、やがて大歌手となって行きました。

人間万事塞翁が馬・・・

アニキサス

アニサキスに感染した魚を食べた後、数時間後から十数時間で、腹部の痛みや悪心、嘔吐があります。

また、重度の場合は腹膜炎などの症状も生じます。

しかし、大半は自覚症状はないか、あってもごく軽度で、アニサキスに感染したことさえ知らないまま、治ってしまう場合が多いのです。

 

ヤマメの寄生虫が入らないようにする食べ方は?

ヤマメの寄生虫が体内に入らないようにする食べ方は、

焼く、煮るなど十分に加熱する

しかありません。

刺身などの生食の場合は、

完全に管理された養殖場でとれたヤマメを食べる

ことでしょう。

ルイベという手もありますが、-20度以下で冷凍できる家庭用冷蔵冷凍庫は、あまりないと思われますので、実行は難しそうですね。

-10度から-15度で数時間冷凍した魚でも、解凍後には寄生虫は生きていたという例もありますので、冷凍-解凍で生食はやめた方が無難です。

結び

渓流の女王ヤマメ。

見て美しく、食べておいしいヤマメですが、この端麗なヤマメにも寄生虫はいます。

特に刺身などの生食は、完全に管理された養殖場でとれたヤマメ以外は、避けた方が安全です。

さばき方や洗浄では、寄生虫を完全に除去することは出来ませんので、天然ものなどはよく焼くのが一番の寄生虫対策です。

ヤマメの寄生虫で重篤な症状になった例は、あまりありませんが、君子危うきに近寄らず、なのです。